カラダのこと・ココロのこと

聴く力を身につける「傾聴の心理学」 コミュニケーション心理学#01

相手の声を聞いているつもりが自分の声を聞いていた・・・ということはよくあるもの。

それは、聞き手の思考の中が、相手の言葉を受け取れていないということ。

そして傾聴力とは、実は、自分の内側の命の部分に触れていくものでもある…。

 

おのころ先生のコミュニケーション心理学1回目のテーマは「傾聴」。

傾聴において重要なのは言葉。言葉をどうキャッチするか、そして合間のものをどう解釈するかだ。

わたしたちは一語一句すべてを聞いているわけではないし、100%意図を理解しながら聞けるわけではないけれど、傾聴をするためには、そのパーセンテージを上げていくという意識が大切。

そして聞こえたものをどう解釈していくかも聞き手の脳の思考回路によって意味合いが変わってくる。

  • 聴く側は、100%聞こえているわけではない、というところからスタートする
  • 話す側も、ちゃんと気持ちを手渡しするように伝える

それだけでも、コミュニケーションは一歩前に進むように思う。

コミュニケーションは奇跡的なもの。

ズレるのが当たり前の中で、意図が伝わるってすごいこと。

 

ただ、傾聴もただしっかり聞けばいい、という時代ではなくなってきた。

相手の言っていることを取捨選択していくセンス、解釈のセンスが求められている。

「傾聴」は、相手も意図しないようなところで、相手の本質をつかむような聴き方ができると良い、という導入からはじまった。

わたしたちは、世界を五感で分断して理解し、再度自分の中で統合している

おのころ先生の友人で、耳が聞こえない方がよくオーケストラのコンサートに出かけていて、あるとき筆談で「どうやって音楽を聴くの?」と聞いてみたらしい。

そしたら彼は、「全身の細胞に響くんだよ」と答えたんだそう。

それはつまり、「振動を聞いている」ということ。

彼らは、耳が聞こえる人にはできないオーケストラの楽しみ方を知っているのだ。

 

わたしたちが普段「音」として認識しているものは、ある種のチャンネルに合わせて音に変換しているだけ。

この世はそもそも周波数の集合体、分けることのできない世界である。

そんななか、生物は五感を獲得し、聴覚、視覚、嗅覚、触覚、味覚の5つの窓から、世界を分断しながら情報をキャッチしている。

そして、得た情報を再度統合し、意味をつけているのだ。

 

もし、聴力だけに集中したらきっとものすごいものが聞こえるに違いない。

 

観音様は、そのまま「音を観る」と書くが、観自在菩薩とも呼ぶそうで、それはつまり「観ること自在」ということ。

五感で区別することなく、最初から世界をまるごと感じることのできる人が観音菩薩。

相手の思い、意図したことを、意識を寸分違わず受け取ってくれる存在ということだ。

わたしたちはそうではない。

だからこそ、何かを知覚するときには程度の差はあれ個人の解釈が入っている、と知っておくことが意味を持ってくるのかもしれない。

耳で聞こえる音だけが、この世界のすべてではない

「音」という漢字は、日が立つと書く。

太陽光が当たると、日光の周波数に対する共鳴が起こって、現象は目に見えるようになる。

対象は、光を反射すると同時に周波数を振動として返している、細かい分子レベルで振動して音を出している。

その周波数が可聴領域に入ってきたときに、わたしたちは音に変換して、キャッチできるようになるのだ。

そしてまた、声というかたちで周波数をのせて喋るということも発達させてきた。

 

人間の可聴領域は、20Hzから2万Hzの範囲と言われている。

耳だけでいうと、犬や猫の方が遥かに人間より広い世界を生きていることになる。

人間に聞こえないから無音なわけではなく、それぞれの生き物は同じ地球上にいても、音波領域は全然次元の違う世界を生きている。

 

物質は分子レベルでみんな音を出している。

わたしたちの聴覚は、空気中の様々な振動のほんの一部分を切り取って音として認識しているに過ぎないが、全身の細胞は耳でキャッチしている以外の周波数を感じている。

地球上は本当は、ものすごい音(振動)で満たされており、わたしたちの周りの大気はものすごい周波数の、ものすごい情報量を携えている。

そこにさらに、5Gの時代がやってくると、カラダとしては一気に周波数が増える感じになるだろう。

 

もし、わたしたちに空気中の振動が全て聞こえてしまったらうるさくて仕方ない。

だから、わたしたちの耳は、わたしたちが日常に生きていくのに必要な分だけを音に変換してくれている。

現代人は聴力、視力、嗅覚も衰えている、五感が退化しているというけれど、古代人や自然的な生活をしている人が都市部に来たら生きていけないと思う。

うるさい、眩しい、臭い・・・精神状態が保っていられないはず。

現代人はある意味この過酷な状況に適応し、聞こえる範囲、見える範囲をチューニングしている。

環境に合わせて生き抜くすべとして、五感の調整を行ってきた、それは進化と捉えることができるのではないだろうか?という話だった。

耳は気体、固体、液体と変化しながら音の成分を分解している

聴覚は単に音を切り捨てているわけではない、音で聞こえる範囲をさらに成分分解をしているという。

耳は3層構造になっていて、奥に入っていくと時間の流れが違う。

  • 外耳:外耳道
    空気振動=目に見えないスピリット的なもの
  • 中耳:耳小骨(人体で最も硬い部類の骨)
    個体振動=物質的なもの
  • 内耳:蝸牛や三半規管(リンパ液が流れている)
    液体振動=感情的なもの(humor)

耳の中は、空気中の振動を気体、固体、液体の順で受け取る構造になっている。

「聞こえる」というのは液体振動によって音として認識していることを指すけれど、耳には聞こえなくても細胞に伝わる音の成分、スピリット的に直感的に理解する音もある。

年齢とともに、キャッチする成分の割合が変わっていくのかもしれない。

ホリスティック医療の世界では、人間はBODYーMINDーSPRITの三位一体で構成されているというが、耳だけを切り取ってもその縮図が見える。

聴覚を最大限駆使して、傾聴の究極までいくと、言葉を超えた世界、魂の世界、スピリチュアルな世界までアプローチできる。

耳というのはそもそも自分に向かって内面を探し出す構造(機能)なので、傾聴は同様に相手の内面にアプローチできる可能性も持っている、ということだっt。

良いコミュニケーションを生み出すには?傾聴テクニック一覧

傾聴する側が、知っておくと良い「傾聴テクニック4つ」。

これらをうまく取り入れることで、相手の心を開き、理解を深めることができる。

  1. ミラーリング
    動作や姿勢を「さりげなく相手に合わせ」て警戒心を取り除くこと
  2. ペーシング
    会話のペースや声の大きさを相手に合わせ、チューニングしていくことで、相手が受け入れやすくする
  3. バックトラッキング
    相手との話がはずむ「おうむ返し」のテクニックで、相手が自分の納得を強めることができる
  4. ノンバーバルキャッチ
    相手に対して、言葉以外のさまざまなサインを読み取る(姿勢、動き、呼吸、表情の変化など)

傾聴とは自分との戦いでもあり、いかに相手に聴くというフィールドを提供できるかどうかにかかっている。

相手をなるべく自分のフィルターで曇らせずに、相手の意図を汲み取っていくということ。

解釈を0にはできないけれど、意識的にフィルターのボリュームを下げることはできる。

相手の言葉の違和感、特別なキーワードを浮かび上がらせるような話し方をすること。

相手を尊重し、こちらの姿勢を自在にすることが大切ということだった。

傾聴から見える「聴き手」の心理状況とは?

傾聴をしているようで、自分が前に出てしまったり、相手の否定になってしまわないよう、こちら側も気をつけるべき。

意外とやってしまう、聴き手側が注意すべきことがまとめられていた。

  1. 早すぎるアドバイス「こうしたらいいんじゃないかな」
  2. 自分の話への誘導「私にも同じことがあったわ、私の場合は・・・」
  3. 中断、さえぎり「あ、それってこういうことでしょ」
  4. 見当違いの共感「あなたがどう感じているかわかります。私も同じ体験がありますから」
  5. 勝手な解釈「あなたは結局、私のことをバカにしているんです」
  6. 重要性の否定「考えすぎ、考えすぎ!」「もっとポジティブに考えたら」
  7. 傾聴NGシリーズ「それは前に聞いたよ」「それは、どう見てもあなたがおかしいよ」

本当は聴き手は舞台設営側なのに、自分の意見を押しつけたり、ついつい話の主人公に躍り出てしまったりすることがある。

相手を否定せず、相手のスケールに合わせて話を聴くというスタンスがとても大事。

自分のクセに気づいていないことも多いので、意識するだけでも変わってくるということだった。

 

今の炎上社会は、単語に敏感になりがち。

本人はそんなつもりがなくても、受け取る側の勝手な解釈で炎上させていることも多い。

もう少し落ち着いてきたら、炎上してる自分の意見は自分だったと気づくのでは?

すべてを自分の経験だけで理解しようとすると無理があるが、心理学者、カウンセラーが書いた世の中のケーススタディを知っておくこと。

小説、映画もボキャブラリーを増やしたり、言外の思いをキャッチできる感性を育ててくれる。

自分でありえないと思っていることがあり得る、ということを知っているだけで、器は広がるし、比喩的な表現がうまくなると、上手に相槌が打てるようになり、上手な言い換えが話を盛り上げることもあるから、だ。

<ワーク>選ぶ言葉も、ストーリーの解釈も決して同じではない

このとき、ハーメルンの笛吹きというワークをやったのだけれど、そのストーリーが今における風刺めいたところがあってすごく印象的だったので、こちらに紹介。

ストーリー解釈

「ハーメルンの笛吹き」のストーリーを聞いて、3つの質問に答える。
質問に対する答えをグループでシェアしてみる。

ネズミが大量発生して困っていたところ、ある男がやってきて金貨1000枚で解決してやると言ってきた
民たちは猫や犬でもどうにもならなかったことから、ぜひお願いしたいと申し出た
男は笛を吹きはじめると、ネズミたちは一斉に彼の後を追い、彼はそのまま川に向かった
彼の後を追ったネズミたちはみな溺れてしまった
ネズミを退治したので男が謝礼をもらいにいくと、民たちは支払うことを渋った
そこで、男はもう一度町の真ん中で笛を吹くと、今度は町の子どもたちが一斉に彼の後を追った
洞窟の穴に子どもたちがみな入ったのち、扉は閉まってしまいビクともしなかった
そして、ハーメルンには子供が一人もいなくなってしまったのだった

  1. 村人たちはなぜ金貨を払わなかったのだと想像しますか?
  2. 笛吹き男はなぜ子供たちを連れ去ったのだと想像しますか?
  3. この童話の教訓とは一体なんでしょうか?

同じストーリーについて話しているのに、教訓が違ってくるのが面白い。

そしてその後の、おのころ先生の解説がすごく面白くて。

コロナに対して人間がどうするか、よりなぜコロナが発生しているのか?

市民がそれを考えることを放棄してしまっている気がする。

だからこのお話を選びました、と。

 

これは笛吹き男が子どもを救った物語かもしれないのです。

登場人物の視点に分けて考えてみると、ストーリーは見え方が変わってきます。

大人たちから見たら、笛吹き男は誘拐犯に思えるかもしれない。

けれど、この民たちはいい大人だったと言えるのでしょうか?

チャンスを与えられたのにそれを生かせず、同じ生活を続けてしまった大人たち。

笛吹き男は、そんな時代から子どもたちを救って、別の世界(次元の違う世界)に連れて行ったのかもしれないーー。

 

生活を変えていかなければならない今、わたしたちに突きつけられている問題も同じではないでしょうか。

今のわたしたちは、子どもたちに新しい未来を見せてあげられるのでしょうか?

 

もしあなたがカウンセリングする立場なら、メタファーを使い、解釈をスケーリングさせながらフィードバックしていくことが大切。

相手を主人公として、主軸となる物語を壊さずに、同じような別のメタファーを引っ張ってきて傾聴しながら、別の物語の中で共通点として答えていく。

そうすると、発想が柔軟になって、相手に想像力を抱かせる傾聴ができてくる。

 

「相手の意図がどういうものなのか」を別の角度から見せてあげられる力が持てると、相手の中に新しい視点が生まれ、問題が解決に向かっていく、ということなのかもしれない。

人間の「聴く力」がいかに曖昧なものか、知ったうえでコミュニケーションするって本当に大切だ。

自分はできている、と思ってしまっているけれど、この機会にもう一度やり直さないと、と思い直した貴重な時間でした。