カラダのこと・ココロのこと

心とはなにか? コミュニケーション心理学#00

コミュニケーションとは心を通じて行われるもの。

私たちは心を変換して言葉にし、言葉同士でまた意味を生じていく。

ところで、そもそも心とはなんなのか?

コロナで突然増えた0回目の講座は、私たちの意識がどのようなものなのかを掘り下げ、現在のコミュニケーションのあり方に戻ってくる、深い旅のような不思議な時間だった。

歴史でたどる「唯識思想」と「唯物思想」

歴史を振り返ると、世界宗教(仏教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教)が私たちの精神文化形態を支えてきたことがわかる。

教えを直接学んだことがなくても、文化として心に影響を与えていたりする。

 

日本仏教(密教)は、13宗56派に分かれ、日本における現存最古の宗派は法相宗とされている。

奈良時代には、仏教は国家事業であり、護国寺や奈良の大仏が建立された。

国をまとめていくのに精神的支柱が必要だったが、日本のお坊さんは自ら名乗り出るかたちだったので、正しい教えを乞うために半島や大陸からお坊さんを呼んだりしていたのだ。

興味深いのが、法相宗における心の概念は、近代の深層心理学とリンクしていること。

それらは、あらゆる事象は原因と結果で成り立っており、心の世界以外には何もないと考える「唯識思想」に基づいているのである。

 

同じような意味を持つ言葉に、「相手は自分の鏡である」というのがある。

自分の鏡として相手を見て、さらに鏡として自分を見たときに、どう自分を変えれば相手が変わるのかを考える姿勢だ。

周りに映るものは自分の一部、自分の鏡であると考える。

 

その反対に位置しているのが、ものごとは物質でできている、意識は物質の副産物とする「唯物思想」だ。

そして、それを経済化・社会現象化したのがマルクス主義である。

 

人間の意識はどんどん進化をしており、コロナもわたしたちの感覚に大きな進化をもたらすはず。

800~1000年前に生きていた人の意識とわたしたちの意識は、相当世界観が違うはず。

物質に恵まれている世界だから唯物史観が流行り、物質的な空間の中にいるのでそれを基準に考えるが、ものがなかった時代に生まれたのが唯識思想だった。

例えば、護国寺は目に見えない怨霊から国を守るためにつくられたし、陰陽師、百鬼夜行などは、目に見えない世界を対象としている。

 

ちなみに唯識思想を分解するとこんな感じになる。

前五識(五感)
六識(思考)
末那識(潜在意識)
阿頼耶識(集合意識)

意識を六識(思考)と呼び、意識の下には末那識(潜在意識)、阿頼耶識(集合意識)、意識の上に五感を通じて入ってくる色々な知覚情報(前五識)がある。

 

前提として、自分との会話、自分の内側を見つめていくことが大事なコミュニケーションであり、その投影として身の回りにある人間関係に様々なコミュニケーションが起きてくる。

目を開けると、山川草木の自然を見る「視覚」が生じる。

目という感覚器官も、山川草木も、究極は原子や分子から構成されている。

モノとモノが認識関係に入った瞬間に「見る」という視覚が生まれる。

モノとモノとの間に心が生じる瞬間だ。

あなたとわたしでひとつの心が生じるのも同じこと。

コミュニケーションというのは、物質としての人間同士としてみても、肉体と肉体の存在の関係において互いを認識しあったときに心が生まれる。

では、モノとモノとが向かい合うとき、なぜ心が生じるのか?

原因を追求してもそこに答えはない。

そこにあるのは心だけ、認識の世界

わたしたちは、言葉で語る通りにモノがあると思っているけれど、そんなことはない。

「言葉で語られたモノは存在しない」ということは、日常の乱れた心の中では気がつかない。

静かな心で、一体何があり、何がないかを追求して観察していく方法がヨガであり、その結果生じたのが、ただ心即ち「識」だけが存在するという唯識。

言葉の趣旨が、意識を通してわたしをつくり、生き死にをつくり、地獄と極楽をつくり、あるなしをつくっていく。

それらはすべて心がやっていることなのだ。

物質は認識の範囲だとはっきりしているが、より高速に宇宙を回転させてみると、一瞬のできごと。

すべてはある意味で分子・原子ができて、まぼろしをつくり、まぼろしを去っていくー

モノは虚しい。基本的には心しかない、認識しかないのだ。

生きている間に認識できることは、すべては自分がどのようにものごとを見るかという心でしかない。

モノとモノとが認識している間に、それとは違うレベルのものが生じる、それが心。

 

人間関係も、ずっと恒久的なものではなく、自然の中で意味合いが変わってくることで存在そのものの意味合いが変わってくる。

自分が世界の捉え方を変えるだけで、世界が変わっていく。

自分のカラダをつくっている環境との相性、関係性も、心のあり方で変わっていく。

現代はコミュニケーション錯綜時代

空気を共有するコミュニケーションから、SNS、webinarなど空間を共にせずとも空間をつないでいくコミュニケーションが出てきた。

多様なコミュニケーションが存在するなかで、本当の気持ちをどうやって伝えたらいいのだろうか?

 

今は、「伝え方が9割」がベストセラーになる時代で、伝え方・話し方のハウツーがブームになったりしている。

けれど、そもそもコミュニケーションは基本的にすれ違うようになっているもの。

その中で、できるだけパーセンテージを上げていくことが大切なのだ。

そもそも自分の脳と相手の脳はまったく違う思考体系を持っている。

その存在を上手に使い、最大公約数を見つけて、気持ちの共鳴を起こしていくことが大切。

脳の共鳴は基本的には気持ちが伝わるということ。

言った言わないが起こるのは、共鳴が起こってないということ。

ただ言葉を伝達すればいいわけではなく、相手が受け取ったところまで見届け、その反応を自分が受け取るところまでがコミュニケーション。

 

笑いは脳の共鳴を起こし、共鳴しそうになるギリギリのラインが長続きする秘訣なのかもしれない。

25年目の夫婦にはどちらにもストレスにならない適度な距離感が長続きする秘訣。

新婚カップルはたくさん笑い合うこと、それがひいては思い出にもなっていく。

夫婦関係、家族関係はある意味密室なので、他と比べようがないし、比べようとするとストレスになる。

ストレスがかかる状況を改善することは大切だが、正解を探そうとすると今の自分を否定してしまうことになるので、昨日より今日のコミュニケーションがより良い状態を目指していくくらいで良い。

自分の心を整理整頓することからはじめる

フィンランド方式の教育法に「アヤトゥス・カルタ」というものがある。

数珠つなぎに放射思考(マッピング)で質問していき、中央のテーマから連想されることを枝をつなぐように書き連ねていく。

イメージ力、階層化することによって自分でカテゴライズしていく力を身につけていく。

コミュニケーション力とは、論理力、思考力、発想力、表現力。

自分の心の整理整頓ができれば、「何をどう伝えるか」を考える力を育んでいくことができる。

 

おのころ先生が、以前、問診票の代わりにマッピングをやってみたところ、予想以上に心理学的アプローチになったのだという。

話を聞いているだけで勝手に相手の中でセラピーが起こってくる。

わたしってどんなもの?わたしって何をするの?

だんだん掘り下げることで、自分の特徴が見えてくる。

そこからカラダの症状に派生させていって、その人の病気の解説書をつくる。

階層化作業をやっていくことで、自分が何にモヤモヤしているのか放射思考していく。

 

過去からのストーリーを描いていくことで、病気の意味合いを歴史として物語にしていくと、終着点、理想的なハッピーエンドが見えてくる。

どういう風に治っていったらいいのか、治るために何ができるのかが日常生活に落とし込まれていく。

自分自身に起こっていることを描写していく、自分自身を落とし込んでいくことで解決策が見えてくる。

 

最初から100パーセントわかってもらおうとするとストレスだけれど、0かもしれないと思っていたら、伝わったことに焦点を当てられる。

その方がはるかに精神衛生上はポジティブだ。

加点方式で考え、成長過程を楽しめたらコミュニケーションは盛り上がる。

コミュニケーションエラーは起こるものだから、心を込めて相手の脳と自分の脳を共鳴させる意識を持つ。

人間関係を自分の周りに育てていくという意識を持つ。

自分が自分の身の回りに心を砕き、丁寧に心を込めると、そのお返しに自分も周りから尊重されるようになる。

周りがわかってくれないと言っているうちは、自分自身の鏡として、自分も自分をわかっていないということ。

今できなくても少しずつやっていくことにコミュニケーションの醍醐味がある。

この機会に人間関係を再起動してみてはどうだろうか?

周りとの関わり方、伝え方を工夫する

自分の周りの人を3つの特性で分けるとこうなる。

仕事だったり上下関係が固定されているとややこしいけれど、本来はそれらは役割なので、タイプとは違うものだ。

あなたの周りの人たちは、どのタイプが多いだろうか?

  1. アグレッシブ(攻撃タイプ)
    自分を中心において、あなたとの時間は同等じゃない、上から目線の感覚
    自己中心的、完璧主義、支配的、優越感に浸りやすい、だからこそ孤独
  1. ノンアサーティブ(非主張タイプ)
    自分より相手を優位におく、周囲との対立は避けられるけれど自分自身に嫌悪感を抱いたり、相手への不満がたまる
    自分をすぐ否定しがち、卑屈になる、不安になる、自分自身が窮屈になってしまう
  2. アサーティブ(攻撃的タイプと非主張タイプの黄金比)
    呼び止められても「それって急ぎですか?」「今忙しいので後でなら話をゆっくり聞けますよ」と伝えられる
    自分の思いを上手に表現できて、相手との信頼関係も深まる

いきなり対立軸をつくる必要はなく、少しずつ積み重ねることで、より良い人間関係をつくっていく。

  • 明快に相手に気持ちが伝わりやすい話し方をする
  • 信頼感があって単刀直入ではあるが充実感もある

そんな関係性をつくっていけたら良い。

そして、コミュニケーションには魔法がある、と信じることだ。

本当に気持ちが伝わったとき、奇跡のような瞬間が生まれることがある。

 

さらに、伝えるときは「結果・事実・感情・欲求」の順番で伝えると良い。

コミュニケーションは工夫することで誘導できる。

基本的には人間は自己承認欲求を持っており、存在を認めてもらいたいもの。

男性は問題解決思考が多く、女性は話を聞いて欲しい(話を聞いてもらうだけで問題が問題でなくなることもある)傾向にある。

自分は、理解して欲しいのか、問題を解決したいのか、気分と思考を分けて考えた方がいい。

自分は、何を伝えたいのか、何を求めているのか、感情と思考の整理整頓をしておくことが大切。

ワーク:気分と思考を見分ける

  • 恥ずかしい→気分
  • どうせうまくいかない→思考
  • 憂鬱だ→気分
  • がっかりだ→気分
  • 気が変になりそうだ→思考

気分はその日によって変わったり、話しかけられたことで変わってきたりするので変化しやすい。

思考パターンは過去の体験において自分の枠組みの中で培われてきたものなので、なかなか変えにくい。

認めて欲しい、気分を落ち着かせて欲しいなら、気分主体の会話をすれば良いし、考え方、問題解決、行動変容を求めるときは、思考パターンを変えていく必要がある。

丁寧にやっていかないといけない思考パターンと、すぐに変えられる気分のパターンが混ざってしまうと何を話しているかわからない。

自分自身の気持ちなのか思考パターンなのかを見つめる作業をやっておくとコミュニケーションがうまくいく確率が上がる、ということだ。

コミュニケーションの質を上げるためには?

自分の脳にある気持ちなのか思考なのかを客観的に見える化するためには、ロジカルシンキングにおけるマッピング(マインドマップ)を使うと良い。

論理的に考えることによって、複雑なものごとをわかりやすく整理して理解することができる。

論理的に話すことができれば意見や考えを周りの人がわかりやすくなる。

シンプルな言葉で渡すとシンプルに受け取れるということだ。

ワーク:ロジカルツリー(分類)

  • 今抱えている問題をカテゴリーごとにどんどん分解していく
    ・whatツリー:要素分解
    ・whyツリー:原因追求(相手から答えが出てくる)
    ・howツリー:問題解決

日常における脳の使い方は往々にしてショートカット形式で、こうだったらこう、と深く考えずにルーチン化されたパターンから答えを出している。

しかし、実際は格納された知識、潜在意識のフォルダをいっぱい持っている。

いざ問題解決しないといけない、コミュニケーションをより良くしたいと思ったときには、普段使わない領域を引き出していかないと新しいひらめきは出てきない。

そのフォルダを探させるのにいちばんいい方法が質問。

聞き手が聴きながらキャッチアップして書いていくと、自分が出した答えを結び助けて新しい脳回路が現れる。

質問する人が答えを出すのではなく、質問された側が勝手に問題解決に気づける。

 

患者が自分で直し方を発見できるように、いかにこちらが環境設営ができるか。

人間はどうなるかを自分で決めたい生き物。

治してもらうといいながら治り方を自分で決めたいと思っている。

自然療法で治りたいと言っても、結果としてそれを受け入れられるかはその人の人間性にかかっているし、その潜在意識のレベルが、手術の成功可否を分けるくらい。

本来自分が治しましたと言える環境がつくれれば、人間はかなりの確率で治っていく可能性がある。

そこに心理的なブロックがあるかどうかは、普段の日常関係におけるコミュニケーションにかかっている。

行動を具体化していく、問題という抽象的な悩みをより具体的な言葉に置き換えることによって行動に移しやすくする。

 

思考の整理整頓において大事なのは、分類、カテゴライズする訓練。

上位に上げていくと抽象的になり、下位に下げていくと具体的になる。

階層意識、分類思考は会話においてもとても大事。

今、どのレベルの話をしているのかをきちんと認識しておくこと。

 

階層で論理的に話すのと同時に、メタファーで比喩的にものを引用する力が質の高いコミュニケーションをつくる。

小説家が引用のプロであるように、状況を別の言葉で、そのままではなく別の例題を出しながら問題の解決の糸を参考意見にしていく。

本を読んだり、映画を見ることで自分の言葉の概念が広がっていく。

上手な空間づくり、色々なものを引用できる力があると、コミュニケーションは、より鮮やかになっていく。

実用書以外に文学作品を読むなど、素敵な言葉遣いに触れておくことが、自分のコミュニケーションの幅を広げていく。

カウンセリングの醍醐味は、言葉が残るというより態度が相手の中に入っていくこと。

あらゆる手段を使って相手に気持ちを伝え、気持ちが伝わったときに、あらゆるパターンが起こり、出口に選択肢ができてくる。

対応のバリエーションを持っている、気楽に自分を機能化しておくとコミュニケーションは楽しくなってくる。

 

コミュニケーションはすれ違って当たり前。ということから始める方がストレスが少ない、というのは本当にそうだと思う。

いかに、愛のある言葉を交わせるか、関係性を育てられるか、それらはすべて自分にかかっているのかもしれない。