教育について考えてみる

フィンランドの職員室は、コーヒーとソファーがあれば良い?

2019年の世界幸福度ランキング(*)で、2年連続で1位になったフィンランド。

緑が多く親しみやすいこと、安全性、子育てや医療への手厚い補助、無償教育などが国民の幸福につながっていると評価され、この結果になったんだそう。

(*)1人当たりの国内総生産(GDP)や社会支援、健康寿命、社会的自由、他者への寛容性、汚職のなさなどを基に156カ国の順位を決定したもの。

 

フィンランドといえば、サンタクロースやオーロラ、ムーミンを思い浮かべる人が多いと思うのだけれど、デザイン、教育に興味がある人なら、絶対に好きになってしまう国だと思う。

(とはいえ、わたしも興味を持ったのは、つい3ヶ月くらい前。笑)

 

ちなみに、2018年は、フィンランド独立100周年の年で、

2019年は、フィンランドは日本と国交100周年を迎えるんだとか。

 

フィンランドは、最近教育でも着目されていて、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)でも上位の国。

加えて、スタートアップ企業を積極的に支援していて、欧州最大級の起業家の祭典「SLUSH」なども開催されています。

 

そもそも、なぜフィンランドが幸せな国、豊かな国と言われ、こんなにも注目されるようになったのか?

そのひとつの理由である「教育」について、少しだけわたしが学んだことをシェアしたいと思います。

 

「この国の資源は、人である」

フィンランドは、スウェーデンとロシアに挟まれている場所柄もあり、複雑な歴史を持っている国。

20世紀に起きた戦争の時代を終え、背負った借金を返すべく、みんなが働かなければならなかった。

そもそも、フィンランドは資源が多い国でもない。

産業に使える国土が広いわけでも、人口が多いわけでもない。

不況で経済が立ち行かなくなったとき、この先国を運営するために、みんなにきちんと納税してもらうにはどうしたらいいか?を考えたのだそう。

そして出た答えが、

「この国の資源ってやっぱり人なんじゃないか」

ということだったそうだ。

「人を大切にすればきっとこの国はよくなる」という想いから、

「まずは教育に力を入れなければならない」という結論になったのだそう。

ちなみに、そのとき改革を行なったのは、オッリペッカ・ヘイノネンという人で、なんと当時29歳で教育大臣になったというから驚き。

 

フィンランドの教育の中にあるテーマは、ひとりひとりが「人生の主体者として幸せに生きる」こと。

人口も資源も少ない国だからこそ、その限られた世界で上を目指しても限界が見えてしまう。

だとしたら、はじめから海外をフィールドにして働くことを考えておけば良い。

雇われる側でも、どこかに所属していても、その人が自立して生きていけるように。

 

苦しいときにこそ、人間はどうやったら良くなるか、を考える。

考えるからこそ、知恵が出る。まさにその通りだなーと思った。

 

実際の教育の現場はどうなっている?

話を聞いていて、私がいいなーと思ったポイントはこんな感じ。

◆デザインの国なので、教室がとにかくおしゃれ。シンプルですっきりしている

日本と違って、机は先生の方を向いていない。机はグループ単位、もしくは可動式のテーブルで、空間をその場その場に合わせて変えられるようになっている。色使いとか、空間配置が学校とは思えないくらい素敵!

 

◆9年間の義務教育のあとに誰でも受けられる10年目がある

その人にとって必要であれば、もう1年基礎教育を学ぶことができるシステムがあり、それに対して、日本のような浪人とか落ちこぼれ、という感覚はない。学びの速度はみんな違うから、その人にとって必要な時間を大切にしましょう、という優しい想いがシステムに組み込まれているのだ。

 

◆フィンランドで先生になるのは、とっても狭き門で、修士(大学院卒)をとらなければいけない

収入が特別高いわけでもないのにフィンランドでは最も人気の高い職業であり、採用率は10%くらいなんだとか!

 

◆保育園のときから、自分で選択して学ぶことを当たり前に

さずがデザインの国だけあって、ビジュアルを使ったコミニュケーションが得意!

例えば、お外で遊ぶ前に着替えて準備をすることを子どもたちに伝えたいとき。

「こうしたらすぐお外で遊べるよ」「こうしてたらいつまでも遊べないよ」という2つの絵(図解)を見ながら、「今のあなたはどういう状態?」「どうしたい?」と、子どもと先生が一緒に確認しながら進めていくのだ。

ほかにも、朝学校に来たら「今日のわたしはどんな気分?」というワーク(習慣?)があって、いろんな表情が描かれた絵を選んで、「今の私はどんな気分で、周りにはどうしてほしいのか」を伝えるのだそう。

「自分の状況をきちんと理解して、相手に説明する」ということを幼稚園から習慣にしてやっているのだ。

そして、それは訓練ではなく、選ぶことが人生において大切だから、その練習をしている、という感覚。

 

◆すべてのことを関連させて学ぶ、つながりと広がりのある学び

例えば、身体の仕組みについて学ぶとして、「大人と子どもってどう違うの?」「犬とか動物は見た目が違うけど、中身も違うの?」「何かを食べたとき、身体の中では何が起きている?」などなど、子どもたちが興味を持ったものについて掘り下げていく。

「道徳とは」「人権教育とは」「異文化交流とは」

そんなことはすべての授業の中にエッセンスとして散らばっているのでわざわざテーマにおくほどではないし、すべてのことはつながっているのだから、自分の日常と絡めながら学びにつなげていくというスタンスだ。

 

◆「好き(自分)」と「働く(社会)」と「学ぶ(学校)」が連携し合うシステム

フィンランドの義務教育の中には、「Me & My City」という職業・社会体験施設(キッザニアみたいなやつ)で学ぶカリキュラムがあって、自分たちがなりたいもの、やりたいことを経験してみることができる。

そして、その体験学習の前には、経済や金融、税金、公共のサービス、広告など世の中の仕組みを学ぶ。これらは、体験学習をしたときに、自分が労働者であり、消費者であり、また地域社会のメンバーの一員でもあるという自分の役割を理解するための基礎知識となるんだそう。

自分との距離感、周り(社会)との距離感、心地よい距離感を小さい頃から学んでいれば、日本みたいに「はい、明日からあなたは新入社員です」みたいなことは無くなるのかもしれないね。

 

◆フィンランドの職員室はソファーとコーヒーがあればよい

これは、職員室は、「先生の執務室」ではなく、「学びや気づきをシェアする場」であれば良いということ。

本当にどこかのホテルのロビーというか、少し大きなお家の団らんルームみたいな感じ。

フィンランドの教育は、先生その人自身を個人として尊重していて、校長先生と先生、先生同士、先生と子どもたちが信頼し合うことが良い学びをつくる、という共通の理解があるからこそ、それが成り立っている。

 

教育には答えがない。

日本の教育が間違っているというわけでもなければ、フィンランドの教育が唯一の正解でもない。

でも、そこに住む人たちが豊かで幸せなら、何かヒントはあると思う。

9月にフィンランドに行くことを決めたので、また帰ってきたら見てきたことをシェアしたいなー。

 

この日のワークショップも素敵だったのでシェア!

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