前回に続き、フィンランドツアーの後半について書いてみた。
もう気づきが多すぎて、膨大な量になってしまったのだけれど、とっても素敵な時間を過ごしたので、ぜひフィンランドや教育に興味のある方は読んでもらえたら嬉しいな。
【4日目】先生にとってのwell-being
この日は小学校と高校へ!踊ったり漢字の授業をしたり、盛りだくさんな1日だった!
フィンランドでは今年から小学1年生から英語を勉強することになったのだけど、私たちが訪れた小学校では、中国語も小学1年生から学ぶんだとか。。末恐ろしい。。
ちなみに言語を教えるのは必ずネイティブの先生。
1週間に数回その学校に教えに来たり、需要が高まればその学校だけのために雇うこともあるんだそう。
ちなみに、今回訪れたのはガイド兼通訳のニーロの奥さんの教室だったので、授業見学の後、少しお話を聞かせていただくことに。
「1年生は最初に雰囲気をつくることが大切なの。教室は恥ずかしい場所ではなく協力し合う場だと理解してもらうこと。子どもとの信頼関係をつくるために、自分も遊びにのること、たくさんやること!できる子はどうすれば周りの助けになれるかを教えることでまとまっていくわ」
ちなみにフィンランドの学校ではほとんどの校長室が入り口の近くにあるんだそう。
日本の学校って奥の奥に配置されているイメージだったからけっこう意外だった。
校長先生からもとっても素敵な言葉が。
「子どもたちももちろん大事、でもそれ以上に先生にとってのwell beingを考えているわ。大人との関わりが怖くないと分かれば、子どもたちはその先社会に出てもうまく周りと関わり合えるはず。先生たちが今日やるべきことは何か、その意味は何かをきちんと一緒に考えるようにしているの。そして、手を出しすぎないこと。先生たちが校長先生の目を意識した判断になっては困るから」
「昔より従順な子は減っているし、生徒の気持ちを理解する能力も求められている。学校に行かなくても成功できる時代だからこそ、私たちは学校の価値を考えなければならないのよ」
午後は、私立高校へ。高校は結構日本と似ているかも。でもずっと少人数制ではある。
ここでも校長先生からお話を聞けることに。
(途中で気づくのだけど、フィンランドには女性校長がめちゃくちゃ多い!政権にもきちんと女性が進出していて、ある意味日本よりずっと進んでいるのだ)
- 小中学校はソフトスキル重視だけれど、高校に入ると突然学力重視になるので、ギャップ問題が生じている
- 偏差値で高校が別れているわけではないので、同じ教室にできる子できない子が存在している
- できない子に何をすべきか?まだその解決策は見えていない
- 背景がフィンランドじゃない人が増えていることも問題を難しくしている(フィンランドは移民を積極的に受け入れているため)
そして、生徒数が減るより前に、先生になりたい人が減っていることに危機感を持っているのだそう。
たしかに日本同様、先生の負担が増えているのは事実。
- ハンドリングしづらいし、ストレスフル
- システムもどんどん変わっていく
- 生徒と向き合う時間が取れない
どこも同じなんだなーと。
フィンランドが100%良いわけではない。
そしてフィンランドの教育をそのまま日本に持っていったところで意味がない。
でもきっと日本の教育のためにヒントになることはあるはず、と話されていた。
先生のお話もすごく良かったけど、ブルーベリーのケーキとコーヒーのおやつも最高に美味しかった…!
この日の夜は廃棄物ゼロレストランNollaに。
「食」に関わるすべてのゴミを出さないレストラン、として最近話題らしい。
厨房にはゴミ箱がなく、生ゴミはコンポスト。
スタッフの服もナプキンも再利用可能なものを使っている。
と、前評判たっぷりだったんだけど、他に起きたできごとのインパクトがすごすぎて、正直あんまり印象がない。笑
この日は、デザイン美術館とかお買い物とかフィンランド観光もたーっくさん楽しんだ1日でした。
【5日目】幸せのかたちを見たような気がした
この日はガイド兼通訳のヒルトゥネン久美子さんと合流して、職業専門学校オムニアとリッタさんのお宅へ!
久美子さんはじめてお会いしたのだけど、本当に素敵な方すぎて、1日でファンに♡
息子さんが大学生なので、バスの中で色々子育てやフィンランドの教育システムについて教えてもらった。
フィンランドでは小さいころから「どういう人になりたいの?」と聞く習慣があるのだそう。
それは、「何の職業に就きたいか」ではなく、「どういう人間として社会で自分の役割を果たしたいのか」ということ。
ニーロも言っていたけれど、親がふつうに聞いてくれたから子どもにも自然と同じようにするんだそう。
親は子どもの人生に責任を持てない。「あなたの人生だからね」と伝えるんだって。
愛のある手放しだなー
ちなみに、フィンランドでは18歳以上の男性に軍隊かボランティアかを選んで奉仕することが義務づけられているんだそう。知らなかった!
さぁいよいよ職業専門学校オムニアへ!
めちゃくちゃおしゃれな建物だった!
オーストラリアにもTAFEという職業学校があるけれど同じような感じなのかな?
オムニアは、ライフロングラーニングセンターつまり生涯教育を学ぶ場所なんだそう。
元々は4つの専門学校だったのが、2006年からさまざまな職業学校が統合してオムニアに。
素敵だなと思ったのが、「学ぶ生徒だけでなく働くスタッフにもここにいることを楽しんでもらう」という姿勢。
小学校の先生も同じように言っていたけれど、相互性ってとても大事。
オムニアには外国人、移民、難民もいる。だから基礎教育もサポートしないといけない。
学びたいことが分からない人は、規則正しい生活をしながら色んなものに触れてみてやりたいことを見つけていくのもOKと言っていた。
コースについては、5年先にどういう人が必要になるかを町と市と一緒に考えてつくっているんだそう。
企業もいい人に来て欲しいから、一生懸命育成に取り組むのだそう。
早いうちに現場を見ることで、合う合わないを知ることもできるし、新しい気づきも得られるのがメリット。
そして、時代の流れは、大きな企業に雇ってもらうのではなく、起業してプロジェクトとして関わっていくかたちになってきている。(日本も遅ればせながらそうなっていくんじゃないのかな?)
生徒の学び方、カリキュラムはそれぞれ違ってOK。
先生は学ぶためのサポート役、生徒からも学んでいく必要があるし、先生自身もアップデートし続けなければならないと思っている。
そして、学校の1スペースで起業できたり(例えば校内で営業している美容室で週3日だけ、とか)、起業しても5年間は学校内でサポートがあるなどシステムも手厚い。
学生でなくなったら今度はインターン生の受け入れ側としても機能するのだそう。
「ものづくりはすごく大事、自己表現のひとつだから。新しくつくったり、古いものを作り直したり、自分のプロジェクトワークをしてみることが大切なのよ」
学んだことを自分で持っているだけでなく、シェアしてお互いの学びにつなげていくんだそう。
学びは一人で起きるものじゃない。相互で影響しあって成長していくもの。
そう言う関係性って素敵だなーと、改めて思った。
午後はリッタさんとぺぺさんのお家へ!
これがもう本当に素敵すぎて、教育視察ツアーなのに、いちばんのハイライトだった気がする笑
リッタさんとぺぺさんは、夏の間は森に住んで、冬はヘルシンキのマンションで暮らしているんだそう。
どこを切り取っても可愛いお家には、いい匂いと優しい空気があふれていて、そこにすべての幸せがある感じだった。
みんなでシナモンロールをつくって、発酵させている間にティータイム。
フィンランド人は、お嫁に行くとき、ひとつ自慢のお菓子がつくれるように、って言われるんだそう。
世界一のコーヒー消費量を誇るフィンランドでは、ホームパーティも盛ん。
そこでコーヒーのお供になるお菓子をささっと出せることがスマートなんだそう。
この日はお昼もお腹いっぱいだったので、どんどん出てくるお菓子は食べきれなかったけど笑
発酵したら生地を伸ばしてシナモンパウダーをかけてクルン、かたちを整えてオーブンへ!
甘い香りが漂ってきて、なんとも幸せなひとときだった。
久美子さんの「人生を考える瞬間って素敵ですよね」っていう何気ない一言も尊い。
「人生を終えるときに自分がどういう状態でありたいのか」私たちはちゃんと考えているだろうか。
また見れば見るほど素敵だと思える人に出会った。
キレイだなー
話すことばもふるまいも美しい。
素敵すぎてため息が出ることってあるんだな。
なんだか素敵すぎる時間を過ごして、心が洗われた気がした。
わたしたちの人生には愛が溢れてる。この人生に生まれてきてよかったな。
【6日目】人生を楽しむために学ぶ
最終日は教員養成学校へ。
訪れたのはヘルシンキで唯一ラテン語を教えている歴史ある高校で、ヘルシンキ大学と提携して教員養成の実習を行っているのだそう。
「テストではなく人生を楽しむための学校なのよ」と校長先生は話していた。
(学校なのに至るところにささやかなデザインが盛り込まれていておしゃれ。。。やっぱり環境も大事だなって思う)
- フィンランドは、国として独立して自立するためのルートが「教育」だった
- 森が多いので、ほかの国と比べてリッチな家族は少ない、みんな森人だったから
- 家庭から社会へのつながりをもたせたい
- 勉強で人生をよくできた人は少なかったので、平等という価値観を大切にしていた
- 素晴らしい生徒を育てるには、素晴らしい先生を育てなければならない。だから私たちは教員養成に力を入れている
- フィンランドのコアカリキュラムは概要のみなので、先生たちに自由がある
- 先生は尊敬されるだけでなく信頼されている
教員養成学校は、フィンランドでは11校、ヘルシンキで2校しかないんだそう。
教員を育てられる先生は限られていて、「担任の先生」と「科目の先生」の両方を教えなければならないからハードルが高いのだ。
そして、生徒がどういう先生になりたいのか、何が与えられるかを優先して考えるようにしていて、教える側(先生がやってきた方法)のやり方を学んでもらうわけではないとも話されていた。
けっこう印象的だったのがラテン語の話。
ラテン語を学んでいる人はすぐわかるんだそう。
わたしはなんでラテン語がすごいのか知らなかったのだけれど、ラテン語はすべての言葉の元になった言語なので、ラテン語を学ぶとことばがどういう風にできているかがわかり、その後、ほかの言語を学ぶ早さが全然違ってくるんだとか。
かつてこの学校ではヘブライ語、古代ギリシャ語も教えていたけれど、今はもう教えていないのだと話されていた。
言葉ってすごいなー
そして深い。
これはフィンランドだから?EUだから?それとも歴史がそうさせてきたのだろうか。
語学の考え方が日本とまるで違うので、驚きしかないし、ただただ尊敬する。
(ツアー中に出会う人たちは基本的に3カ国語は話せる気がする。。。)
ちなみにフィンランドで先生になるには、教育実習は2回、しかも8週間!
めちゃくちゃハードだけれど、生徒の感想はやりがいがある、というものが多いらしい。
わたしも教員免許とったのだけれど、全然ハードル違うな、、、と驚いた。
この日も少しだけ観光を。
石の協会に差し込む光が美しすぎた。
ヨーロッパの協会は派手なものも多いけれど、そうじゃないものも多くてそれぞれ味があって好きだなーと思う。
最終日のディナーはおなじみ「かもめ食堂」でごはん!
1週間とっても濃い時間を過ごせたし、教育に興味のある人たちと繋がれたことがとっても幸せな時間だった。
普段は全然違うところで生活しているけれど、同じ想いでつながっているから、出会ってまもないけどとっても深い。
あっという間すぎて、でもインプットはすごくて!
この1週間で学んだことを消化するにはちょっと時間がかかるなーと思いました。
【7日目】ムーミンとトーベの人生
ツアーのみんなが日本へ帰国する日、わたしはバスでタンペレへ!
タンペレはヘルシンキから高速バスで2時間くらい。
小さいけれど、紅葉も美しくて素敵な街だった。
いちばんの見どころ、そしてわたしの目的はムーミン美術館!
7月のイベントで、戸沼さんが「ムーミンのストーリーがトーベの人生だった」と言っていたのが耳に残っていて、なんとなく行ってみようと思っただけだったのだけれど、想像以上に深すぎて、帰ったら全話読もうと心に決めました。
ムーミンのストーリーは、戦争の恐怖の中で安らぎと理想郷を求めて描かれたもの。
トーベは、辛い現実に耐えかねて、自分の中におとぎの国を作り出した。
緑の谷でムーミンやその仲間たちがいっしょに幸せに平和に暮らしている。
それはトーベの夢でもあったのだと思う。
ちなみに、ムーミン一家はトーベの自己投影でもあるんだそう。
実際に戦争が終わると、絵本は色鮮やかで楽しい雰囲気に!
ムーミンたちの人生ものびのびと自由になっていくのだ。
パートナーとの関わりや、人間としての成長。
美しい夏の自然や冬を乗り越える厳しさ。
たくさんの思い出をつづる美しいストーリー。
しかし、最後のお話にはムーミンは登場しないんだそう。
ムーミンは思い出や憧れの中の存在になったのだ。
これはトーベとムーミンが統合されたことを意味するのかもしれないなーとか。
ムーミン一家を懐かしむ人たちは、こんな風に前を向いて歩き始めるのだ。
「自分たちは他の人になりきることなんてすべきではない。自分らしく生き、自分ならではの生き方でなければ」
わかっている。
わかっているけれど、自分の人生を生きるって、案外難しい。
もうひとつ素敵な言葉があったのでメモ。
「何でも自分のものにして持って帰ろうとすると難しいものなんだよ。ぼくは見るだけにしてるんだ。そして立ち去るときにはそれを頭の中へしまっておくのさ。そのほうが、かばんをうんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからね」
そして、フィンランド最古のテキスタイルブランドのフィンレイソンの旧工場もこちらタンペレに。
自然をモチーフにしたファブリックがとっても素敵で、こういうデザインが日常に溶け込んでる暮らしっていいなーと改めて思う。
日常を美しく。
それは特別ではなく、日常にあるものを心地よく美しく彩るということ。
一つひとつにフィンランドらしさが込められていて、見ているだけでじんわり心が暖かくなった。