先生の学校#番外編に行ってきたよ。
今回のテーマは、フィンランドの歴史から紐解く「教育」と「デザイン」!
代表の三原さんと、ツアーコーディネーターの戸沼さんのお二人から、それぞれ教育とデザインのお話を聞けるとーっても楽しい時間でした‥‥!
(9月にフィンランドに行くのが本当に楽しみすぎる…!)
フィンランドの教育について(三原さん)
フィンランドってどんな国?という方もいると思うので、簡単にポイントをまとめるとこんな感じ。
- フィンランドは、実は日本から一番近いヨーロッパ。人口は兵庫県民と同じくらい
- 消費税は24%で、文化的なものや医療は安く、対象によって税率は異なる
- 世界幸福度ランキング1位としても有名になった(ちなみに日本は58位)
他でフィンランド教育については触れているので、ここではポイントのみご紹介します。
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学び直しができるシステム
- プレスクールがあり、「小1の壁」を起こさないためのグラデーションが敷かれている
- 「付加基礎教育」といって、必要ならばもう1年(無償で)義務教育を受けられるシステムがある
- 普通高校と職業専門学校は行き来ができるシステムになっている(人が着火するタイミングはそれぞれだから、気づいたときに学び直しができる)
- フィンランドの先生は夏休みは3ヶ月、5年に一度長期休暇がとれるので、いつでも学び直すことができる(国語の先生が、社会の先生になったり!ひとつの科目をずっと教える必要もない)
- フィンランドは資格の国とも言われていて、ウェイトレスでも資格が必要
大人になっても学び直しが盛んだが、その一方で資格をとることが目的になってしまったり、その学びが本当に必要であるかなど、どこに向かっているのかわからない感もあるらしい。
小さいころから対話する習慣を持つ
- 保育園のときから、違和感があったら対話する習慣を持っている
- 「自分と相手がどう違うのか」対話をしながら理解を深めていく(移民の人が来てもびっくりしない)
- 小さいころから「今日はどんな1日にしますか?」という問いかけをする
- 床に座ったり、寝転んだり。自分の1番リラックスできるポジションで学んだらいい
- 自分にとってベストな学びを模索することが大切
自立している人、やりたいことがわかっている人にとってはとてもいい国だが、生き方に戸惑っている人にはすごくしんどい国かもしれない。
ME and MY CITY(年間30時間かけて行う社会教育)
- 社会がどのようにして動いているのか、仕事をしてお金をもらうことの大変さを知る
- 前半で世の中のしくみを学び、後半で実際に社会活動に取り組んでみる
- 税金とは何か?どのように使われているのか?それぞれの企業がどのような役割をしているのか?を知る
簡単に言うと、学校と地域と社会がかかわりながら子どもを育てるシステムを持っているということ。
日本ではあまり見られない、メディアリテラシーもしっかり学ぶので、
「どうしてこのテレビ局はこの情報を多く扱うんだろう?」
といったことをテーマに置き、クリティカルシンキングの力を養うのだそう。
フィンランドの教育はPISAで上位に並んだときから、世界で注目され、今でも多くの教育視察を受け入れてはいるが、教育改革から年数を重ね、少しずつマイナス面も出てきているのが現状。
時代は変わり、人も変わる。
その中で、どう生きていくか、というのはずっと人間が問い続けなければならない問題なのかもしれないね。
わずか29歳で教育大臣に就任したオッリペッカ・ヘイノネンの著書に素敵な言葉があったので引用!
教育とは何か?という問いに対して、彼が答えたことば。
「自分の頭で考え、自分の心で感じたものを信じること。
そしてほかの人たちにも同様にそれぞれが自分の頭で考え、心で感じる機会を与えること」
「学校のためではなく、人生のために」
教育を志す人であればきっと心に響くと思う。
学校は知識を詰め込む場所ではないよね。
今回の人生をどう豊かに生きるか、それを考える場所であってほしいと思う。
この人の本、今度ゆっくり読んでみたいなー。
歴史から紐解くフィンランドデザイン(戸沼さん)
フィンランドは約650年間スウェーデンに支配され、その後約100年間ロシアに支配されていた。
そして、立憲君主制のフィンランド大公国となり、はじめて自らのアイデンティティに直面することになる。
「フィンランド人とは何か‥‥?」
「我々はスウェーデン人には戻れない、しかしロシア人にもなれない。フィンランド人なのだ」
占領下から独立し、その後も内戦が相次ぐ、苦しい時代の中で確立されたのがフィンランドデザインだった。
ちなみに、フィンランドは労働者とした社会民主主義の思想が根強く残っているため、平等がもっとも尊重される価値観とされ、法律にも「信頼を基にした平等な社会をめざすこと」が宣言されている。
「フィンランドにおける平等の歴史は長く、最も尊重された価値観でもあります。平等な社会とは、基本的に全ての人が平等に扱われ、誰もが同等の権利と責任を与えられていることを意味します 」
ちなみに、フィンランドは女性参政権をいち早く導入した国でもある。
以下は、戸沼さんが紹介されていた、フィンランドで有名なデザイン会社の数々!
1820年 フィンレイソン
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北欧で最初のテキスタイルデザイン
自然の絵柄が多くて、とっても可愛い
1873年 アラビア
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「美しい日常を」
ものがない厳しい時代だからこそ、日常を美しくしようという意味が込められているのだそう
華やかな絵柄で、見ているだけで幸せになる
1881年 イッタラ
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ガラス職人を呼んで技術開発をしたブランド
古い新しいに関わらず全てを組み合わせられるデザインが人気
幾何学的な模様が多く、スタイリッシュでおしゃれ
1918年 アルヴァ・アアルト
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都市計画と建築デザインの巨匠
「曲線の美」「波線の美」が有名
アートとクラフトを組み合わせた
この人のデザインは本当にフィンランドで愛されているらしい
1935年 アルテック
アートとテクノロジーを融合させ、より良いものを毎日の生活に取り入れようとした
「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」
「デザインが国をつくっていった」
1949年 マリメッコ(マリのための服という意味)
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ファッションショーを開催し、売れるようになった
開放的で、女性が動きやすいデザインを
寒い国で気持ちがふさがるなか、服から明るくしようとした
言わずとしれたマリメッコ。奇抜な柄と思っていたけれどこんな歴史があるとは!
1914年~ トーベ・ヤンソン
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政治の風刺画も書いた
「ムーミンの人生がトーベの人生だった」
社会的メッセージの強い作風
ムーミンと言えば童話のイメージだけれど、もっと奥が深そう・・・
ここからは、戸沼さんの本に登場するデザイナーたち!
サミ・ルオツァライネン(プロダクトデザイナー)
マリメッコ初のテーブルウェアのデザインを担当
“Made for Everybody”
作品が目立つのではなく、日常に溶け込むものを
使いやすいこと、使い続けてもらえることが価値
ヘイニ・リータフフタ(セラミック・アーティスト&デザイナー)
“Design for Everyone”
小さいころ空、雲、花、森、木の葉のひとつひとつをずっと書いていた
それが、のちにデザインになった
デザインにおけるフィンランドらしさとは何か?
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それは、“Design for Everyone”(全ての人のためのデザインである)ということ。
フィンランドは1917年に共和国としてロシアから独立し、急速に近代化したため、人々の関係性がとてもフラット。
デザイナーが王室のために仕えた歴史もなく「王室御用達」という表現がない。
最初から“for Everybody”全ての人々のためのデザインなのだ。
教育が無償なので、興味があることを最適な場所で学ぶことができる。
「あそこに行ったらいいよ、あの人に学ぶといいよ」
全ての人に伸びる可能性があり、才能を伸ばせる環境があるということ。
そして、フィンランドは森と湖の国と言われており、フィンランド人は「森の人」とも呼ばれる(フィンランド人は人間とクマが結ばれて生まれた、という伝説もあるほど!)。
フィンランドのデザインは自然と共にある。
だからこそ、自然の中で得た感覚を大切しているのだ。
フィンランドのデザインは変わっていく。
アイデンティティの確立は終わり、これからはデザインで問題を解決していく時代。
子ども向けのデザインウィークが開催されたり、暮らしの中にデザインが溶け込んでいる。
良質なデザインが常にこどもたちと共にあるということが、暮らしを豊かにするのだ。
過酷な歴史の中で生まれた、平等という価値観。
「平等に美しい日常を提供していくにはどうしたらいいか」
そんな問いかけのひとつの答えとして、デザインと教育に力を入れた。
その結果、幸福度があがったのだ。
ちなみに、フィンランドでは、デザイナー個人の名前をとても大切にしており、作品にはブランド名だけでなくデザイナーの名前も刻まれるので、非常にモチベーション高く働けるという。
そしてそのことにより、質の良いものが生まれるという好循環が起きている。
また、フィンランドという国は、人口も少なく、国内だけの需要では成り立たないので、ビジネスを立ち上げるときには世界を舞台にしているのだという。
また、“Timeless Design”という価値観も大切にされている。
それは、時を経ても色褪せないデザインを、という意味。
ひとつ壊れたとしても、また買い足せる。別のものを組み合わせても違和感がない。
「日常の中にどれだけ溶け込めるか」
それがフィンランドにおける上質という価値観なのだ。
ちなみに、税金の3%はアートに使われており、それは人として「本物の目」を養うことが大切だという価値観の現れでもある。
最後に、戸沼さんの本から引用。
フィンランドは長くスウェーデンやロシアなどの大国に挟まれ、支配されてきた忍耐の歴史があり、近代に入った1917年にようやく「フィンランド共和国」として独立した比較的若い国である。
共和国としての独立後も内戦が続き、国内の雇用や福祉を含め、不安定な情勢が続いた。
しかし、この歴史と経緯こそが、フィンランドデザインの方向性を位置付けたと言っても過言ではないだろう。
そういう意味において大きな鍵となるのが、かのアルヴァ・アアルトのアルテックに代表されるように、技術の進歩によってデザインを産業として成り立たせ、マスプロダクトにしたことだ。
それにより国内の雇用を生み出し、すべての人々の生活レベルをあげ、豊かなものにしていった。
つまりこれこそが「Design for Everyone」。
デザインによって、全ての人々に平等で豊かな暮らしを。
長く願い続けてきたフィンランド人の想いをデザインが体現しているのである。
フィンランドは、幸福度、質の高い教育、有名なデザインなどで、非常に注目されている国。
しかしながら、それを生み出すためには、苦しい歴史や自らのアイデンティティを見失いかけた現実があった。
ある意味自立している一方で、自分を見つけられない人が生きにくい文化であったり、寒く暗い北欧という環境でうつになる人も多い国。
いいところはあるけれど、そればかりに着目するのではなく、なぜそうなったのか、その一方で今どういったことが問題とされているのか、そういうことにも目を向けることが大切なのだなと思った。
9月のエデュケーショナルツアーでは、教育施設がメインにはなるけれど、人々の暮らしの中のデザインに少しでも触れる瞬間があればいいな、と思う。
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