いよいよ明日から瀬戸内国際芸術祭2019がはじまります!
わたしは、3年前に瀬戸内国際芸術祭、通称「瀬戸芸」に出会って大ファンになったのだけれど、実は、それまでほとんど現代美術には興味がなかった。
わたしにとっての入口はあくまで仕事で、旅行会社の商品企画として「瀬戸内」という地域を担当していたからなのだけど、知れば知るほど面白くて、そこに住む人たちを知っているからこそ、本当に素敵なイベントだと感じるようになって。
さらにそれはイベントの開催や集客自体が目的ではなくて、その地域に住む人たちを幸せにするための日々の営みのようなものだと知ったとき、これは本物だと思った。
わたしの言葉なんかで、そのすごさが伝わるわけはないのだけど、でもやっぱり素敵だと思うものは、みんなで共有したいと思うから。
何がすごいか…を少しだけご紹介したいと思います。
とにかく瀬戸内の風が気持ちいい。アートは美術館の中だけじゃない
「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」
昔そんな言葉があったらしいのだけれど、わたしも本当に瀬戸内の海はすごいと思っていて。
とにかく、海の色が優しい。そして、穏やか。お天気の良いときには、太陽の光が反射してキラキラ揺れるのをずーっと眺めていたくなるくらい。
瀬戸芸の良いところは、旅する道中に常に海があるところ。
島でいくつかの作品に触れて、移動する間に瀬戸内海の美しさに触れて、また作品に触れる。
一度気持ちがリセットされる感じで、また新しい作品を見たときに、素直にその作品を見ることができるのだ。
総合プロデューサーの福武さんも「僕は瀬戸内海の自然を借景して作品を展示している」と言っていて。
(借景:遠くの山などの景色を、その庭の一部であるかのように利用してあること。そういう造園法)
ルーブル美術館もメトロポリタン美術館もとっても素晴らしい。
でも、瀬戸芸は、ある意味、瀬戸内海全部を舞台にした美術館のようなものだと思っていて。
そこに人の営みとか、伝統技術とか、悲しい歴史とか、未来への希望とか、いろんなものが詰まっている。
だからこそ、迎える人にとっても、訪れた人にとっても、特別なものになるのだと思う。
現代美術には答えがない。だからあなたの感じたことがすべて
これは、私が現代美術に興味を持ったきっかけになった1冊の本から。
現代美術の多くは、解説がない代わりに「それを観てあなたはどう感じましたか?沸き起こった感情をどう表現しますか?」という問いのようなものみたいで。
共通の正解はないから、そのアーティストの問いかけに、作品を観て、その人が感じたことが答え。
それを受け止めるには、自分にもスペースがないとなーと思うのだけど、瀬戸芸の場合は、瀬戸内海の風景がうまい具合にスペースを作ってくれる感じがするのだ。
以下、引用。
「私は、多くの現代美術のアーティストは現代社会の問題や課題や矛盾を、ひとつの作品に込めているのだと思います。
そんな作品を、問題や課題や矛盾の多い都会に置いたとしても、はたして作品みずから光を放つだろうか?
同時に瀬戸内海の美しさは、江戸末期から明治にかけてやってきた世界の数多くの人々からも高く称賛されています。
この世界に誇る美しい自然の瀬戸内海に現代美術を置くという私の構想は、こうしてまとまっていきました」
「私は、絵が主役になってはいけない、あくまでも主役は人間であるべきだと考えています。人間とは、絵を見ている人々のことです。
『素晴らしい作品がある、みなさんこの良さが分かりますか?』といった考えがこれまでの絵画の見方だったとすれば、見ている人に全てを委ねたい、というのが私の考えです。
アートを大衆に引き戻す、アートが主張するのではなく、アートが自然や歴史の持っている良さを引き出す、そしてそれらの相互作用で人間を動かす。
即ち、感動やある種の感情を引き出す。
これは単なる鑑賞ではなく、観ている人の生き方を変えてしまう可能性すらある、それが現代美術の持つ素晴らしさです」
出典:『直島 瀬戸内アートの楽園』、福武総一郎・安藤忠雄ほか、新潮社
直島の地中美術館を設計した安藤忠雄さんのことも、コンクリートのイメージがどうしても強かったのだけれど、それはあくまで対比のためだと知ってびっくり!
究極の人工物であるコンクリートの空間にどっぷり浸かった後に、カフェから瀬戸内海の美しい風景を見せる。そうすると人は、その景色を特別なものとして再認識するのだそう。
とはいえ、コンクリート空間にも自然光を取り入れたり、風を取り込んだりしているので、決してそのつくられた空間も人工物だけではないのだけれど。
瀬戸芸が生み出したコミュニティの変化〜男木島の小さな奇跡〜
人口200人足らずの小さな島・男木島。
その小さな島は高低差が結構あるので、坂を登ると瀬戸内の景色が一望できて、本当にキレイなのだ。
瀬戸芸では、直島、豊島、小豆島、と大きな島を回る人が多いと思うのだけれど、わたしはこの男木島が結構好きで。
大好きなカメラマンさんが以前カフェをやっていたこともあって、特別な思い入れのある島。
そこで起きた小さな奇跡を紹介したいと思う。
第1回芸術祭では男木島の中学校の子どもたちが色々な場面で参加してくれていたのだけれど、
第2回芸術祭のときには小学生、中学生が1人もいなくなってしまい、学校も休校になってしまった。
そこでアーティストたちが奮起して、学校をアートで装飾するだけでなく、夏の林間学校を開いてアーティストによる体育、美術、音楽などの授業を行ったんだそう。
そうしたら何が起きたか?
男木島出身者の子どもたちが「父ちゃんの生まれ育った男木島が今すごく人気だから一度行ってみようよ」と。
その子どもたちが「こんなに楽しい島ならここに住みたい」と親にお願いして、3つの家族が移住することになったのだ。
そして、、第3回芸術祭のときには、小学校、中学校が再開していて、新しい幼稚園までできてしまった。
その後、私設の図書館ができ、IターンやUターンも増えている。
アートがエネルギーをつくり出し、人を呼び、島を元気にした。
こんなことが、たった10年で起きるのだから、世の中捨てたもんじゃないな、と思う。
元企画担当者が語る!お得な楽しみ方と必須アイテム
もし、ブログを見て少しでも興味が湧いた!という方もそうじゃない方も!笑
ぜひ、行くならめいっぱい楽しんでいただきたいので、元商品企画担当者がおすすめのアイテムをご紹介します。
3シーズン用(4,800円)と1シーズン用(4,000円)がありますが、わたしは絶対3シーズン用がおすすめです。もちろん1回しか行けない方もいるので一概には言えないのですが、1回行ったらもっと他の作品が見たくなるし(200作品以上あるので、多分1回で見ようとするのはかなりしんどい)、会期によって見れる作品が違うから。あと、瀬戸内の四季折々の美しさも旬の美味しいものも、瀬戸芸の魅力のひとつなのでぜひ何度か足を運んで欲しいです。
◆共通乗船券(3日間乗り放題、2,500円)
芸術祭の会期中、会場となる12島のうち5島を結ぶフェリーが、3日間乗り放題!一度購入(引換)した後は、窓口に並ぶことなく乗船できてとっても便利!これはもう圧倒的にお得なので、迷うことなく買いたいアイテム!高速船とか一部使えないものもあるのですが、フェリーって意外と高いので、2日以上いる人はほとんど得になるくらいじゃないかと。あと、切符売り場が結構混むので、時間がないときに本当に楽です。
これは、個人的には、あったほうが良いと思っています。もちろん作品の説明もそうだし、何よりアクセスについてまとまっているのがとっても楽!瀬戸芸期間中の限定運行の情報とかも乗っているし、船とかバスの情報が一気に見れてめちゃくちゃ便利です。移動中とかにマップ見ながら、1日の回り方とかご飯どこで食べようかなとか考えるのも楽しい。
多分前回はなかったんじゃないだろうか…わたしも使ったことないので、これから試します!でもアクセスとかはきっとグッとわかりやすくなると思う!
あとは、歩きやすい靴、身軽な荷物、水分補給(歩くので喉乾く&小さい島にコンビニはない!)があれば大丈夫なはず!おそらくまだ電子マネーあまり使えないと思うので、なるべく細かい現金持って行ってくださいね笑
瀬戸芸ってイベントとしては100万人以上を動員する規模なのだけど、とはいえ開催地は田舎なので、現地交通は都会の人が思っている以上に複雑で不便なのです。
1本船を逃すと、まじで今日の宿に辿り着けない・・・ということも。
だから、短い間で色々見たい、という人は、ぜひある程度の計画は立てておいた方が良いです。
そして、船もバスも人数オーバーで乗れないこともあるので、何かあったら、これも旅の醍醐味だな、と思える心の余裕もぜひ。
そこで思いがけない出会いがあるかもしれないし。
さぁ、第4回目の芸術祭は、いよいよ4月26日から!
春、夏、秋と3回期に渡って開催されるので、ぜひ時間のある方は足を運んでみてくださいね。
ちなみに春会期(4月26日〜5月26日)に行くかたは、沙弥島(しゃみじま)に行くのがおすすめです。
なぜなら…春会期限定の作品がほとんどだから!
ちなみに夏は一番混むので、ゆっくり作品を回りたい方は、春や秋に行くのがおすすめですよ。
◆◆◆瀬戸内国際芸術祭2019のHPはこちら (終了しています)◆◆◆