瀬戸内島旅&瀬戸内国際芸術祭

瀬戸内国際芸術祭のこと。アートには人を動かす力がある

わたしは今の会社に入ったきっかけが、実は瀬戸内国際芸術祭だったりする。

前の会社で、東京発着の中四国行きの個人旅行商品をつくっていたのだが、そこで最後につくったパンフレットが「瀬戸内島旅」というタイトルだった。

それはちょうど3年前で、2016年に瀬戸内国際芸術祭の第3回目が開催されている年。

わたしはしまなみ海道とか広島湾側の担当だったので、実は商品をつくってから詳しい内容を知ることになるのだけれど、その頃たまたま高校の友だちが直島が好きだというので、なんとなくちょうどいいし行ってみようか、そのくらいの気持ちで旅に出たのだ。

 

そしたら、それがものすごい面白くて。

アートとかそんな一言で語れるものではなくって、ここは人生を考えさせられる場所だ、と思わされた。

美しい自然と、その中にある作品たちが、強烈なメッセージを放っていて。

聞けば聞くほど、本で作品について知れば知るほどに、興味をそそられた。

芸術なんて全く興味がなかった私が、たった2日間でその魅力にはまってしまったのだ。

そしてわたしは、その3年後、瀬戸内国際芸術祭を生み出した人の会社に入って、目の前で話を聞くことになった‥‥!

(今その人はニュージーランドに住んでいて、前回の瀬戸芸開催のときには社内でも講演会なんてなかったらしい!)

自然だけでなくアートがあったことがとても大きな影響をもたらした

「人間にとっては、自然がいちばんの教育者である」。

これは、わたしがアメリカに行ったときにもある人に言われたことばで、本当にその通りだと思う。

自然は私たちに何か直接働きかけることは少ないけれど、その中に居ると、内省もするし、自ずと答えが出ることがある。

自然の摂理を大事にすべし、ではないけれど、自然の中には大きな循環があって、私たちが生きていくうえで学ぶべきことは全て含まれているような気がする。

もう1つは「本よりもアートの方が人を覚醒させる」ということ。

たくさん本を読むことは大切だが、それはあくまで知識の習得であって、アートは心にまっすぐ働きかける。

視覚情報が人間に与えるインパクトが大きい以上に、心が動けば人間は一瞬にして変わってしまうということだ(そして私もその一人)。

東京を拠点にしていないアーティストに声をかける

直島で作品をつくるときには、できるだけその土地にゆかりのある人か、もしくは東京を拠点としていないアーティストに声をかけるんだそう。

グレーター東京と言っても3,000万人、1億の人は田舎に住んでいるのだから、地方が良くならないと、日本は絶対に良くならないということ。

日本はエネルギー自給率8%、食料自給率39%、自分の足で立てない国になってしまった。

地方の中央都市の市議会議員は1人しかいない、問題は山積み。

どうやって解決していくのか。

問題だとわかっているのに手がつけられない現状がそこにあるのだ。

そして、「子供たちにどういう教育をしたらいいのか」ということはみんなで考えなければならない。

メディアは東京の人が多いが、本当は自分の足で歩いて自分の目で見ないと分からないよね、とも言っていた。

「art=architecture」芸術とは本来、人工的な美しさを指すもの

人工的な美しさを、人工的な場所に置いてもしょうがない。

自然の中に置くことで、そのメッセージが際立ち、人々に訴えかけるのではないか。

瀬戸内海の島々は、戦争の影響を受けにくかったため、幸いにも日本の原風景が残っている(広島は苦い記憶を持っているけども)。

直島のアートでは、「自然を借景する」ということをやっている。

「瀬戸内海が自分の庭だと思ったら?」

気の持ち方次第で世界の見え方は変わるということ。

アートサイト直島は、NYのメトロポリタン美術館やルーブル美術館とは違う、地域を巻き込んだ美術館なのだ。

不易流行の精神

不易流行とは、いつまでも変化しない本質的なものを大切にしながら、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。

また、新味を求めて変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であること。

人の基本的な営みはずっと変わらない。

直島の作品によくテーマとして出会う「在るものを活かし無いものを創る」ということも、不易流行のひとつの形ではないかな。

幸せなコミュニティに住むということ

マズローの欲求段階説は一般的には5段階と言われているが、本来は6段階あるらしい。

それは、時代の流れの中で、切り取られてしまったのだそう。

そして、その6段階目は「コミュニティ発展欲求」。

つまり自分が所属するコミュニティを豊かにするということだ。

直島はアートが入ったことによって、若い人が増え、お年寄りも元気になった。

決して金儲けのため、観光のためだけではなく、地域の人にどうやって受け入れてもらえるかを考えながら作品をつくってきたことが、こういう結果になったんじゃないかな。

経済は文化の僕である

「何かを生み出すときに、200年、300年残るものをつくれていますか?」

これは胸が痛くなることばだなー。

国のアイデンティティをつくるのは文化だ。

経済発展だけを求めた先に豊かさはない、という日本への強烈なメッセージな気がする。

アートサイト直島は行き当たりばったり

いい芸術とは、いつ出会えるか分からないし、それが手に入るかもわからない。

ある意味運、とも言っていた。

モネの絵なんかも本当にタイミングがあったからこそ、あそこにコレクションされているのかも。

今後は海外へノウハウを広げていくそうで、今取り組んでいるのは中国のある地域。

活動を通して、アートや自然を語れる人とつながっていくこと、企業の思いをメッセージ化していくことで、将来、資産になると言っていた。

おそらく、もう瀬戸内はやりきった、という感じなのかも笑。

「倭京になれ」

倭京とは、海外進出した起業家や企業の駐在員など世界各地に居住して活動する日本人の呼称。

日本にいて日本がすごい、と言っていても仕方ない、ということなのかな。

日本人って海外に出ると、全然日本のことを話せなかったりする。

自分のアイデンティティなのにね。

企業の30年寿命説

企業は、30年くらいで倒産してしまうことが多い。

創業社長の任期がこのくらいなのかなとも思うけれど、人も時代も変わっていく中で変わらずに在り続けるというのは相当の努力と志が必要、ということだと思う。

そして、ここでは、事業で得た富を文化的資産として残すということが大事、ということが語られていた。

生きている証として後世に残す、それが永遠なるものを求めた結果かもしれないね。

 

ここにも同じような話があったので、ぜひ見て欲しい!

ベネッセ 福武總一郎 直島メソッドとは?~滝川クリステル いま、一番気になる仕事~

 

そして、わたしはこの後、瀬戸内国際芸術祭のボランティア「小エビ隊」に参加することになり、さらに社内広報誌&動画に掲載されることになり、さらに直島で教育キャンプをやることになったのだ‥‥!

人生ってどういう風に転んでいくかわからないね。

本当に不思議だし、この先が楽しみだ!